高齢者の一人暮らしはどのくらいで限界?発生する問題と解決支援サービスとは

2022-05-24

増加する高齢者の一人暮らし

高齢者の一人暮らしはどのくらいで限界?発生する問題と解決支援サービスとは

日本の高齢者人口の推移

内閣府の「令和2年版高齢社会白書」で、日本の総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は、1950年には総人口の5%を下回っていましたが、1970年に7%を超えて、1994年には14%を超え、2019年10月1日時点では28.4%と増加傾向にあります。

不安を抱える高齢者

一人暮らし高齢者の割合

同じく「令和2年版高齢社会白書」では、65歳以上の高齢者のうち、一人暮らしをしている人の割合は、1980年には男性4.3%、女性11.2%、2015年になると男性13.3%、女性21.1%、高齢者の一人暮らしが大幅に増加しています。
この増加傾向は今後も変わらず、推計では2040年に男性20.8%、女性24.5%になると予測されています。

一人暮らしの高齢者が抱える生活の問題点と限界

健康や病気への不安

病気にかかりやすくなったり、症状が慢性化しやすくなったりするなど、老化に伴う健康への不安が出てきます。頼れる家族が同居していない場合、病気やケガなど異常事態が起こったとき、自力で対処できるかが毎日のストレスとなります。

介護が必要な状態になる

これまで、一人暮らしで自立した生活を送ってきた高齢者にとって、人のサポートや介護費用が必要になる生活は、肉体的にも精神的にもかなり大きな負担です。
また、要介護状態になって家の中に引きこもりがちになると、人との交流機会が減り、生きがいの低下にもつながってしまいます。

地震や洪水など自然災害が発生する

日本は、地震や豪雨、台風、洪水といった自然災害の多い国です。「災害時に自分の力で対応できるだろうか」と今の生活に限界を感じる高齢者も多いようです。「一人暮らし高齢者に関する意識調査」でも、「自然災害(地震・洪水など)」の不安を感じている割合が29.1%ありました。

認知症が発症・進行する

認知症が発症しても、高齢者本人には自覚がないケースは少なくありません。
家族と同居していれば、日常の言動の変化から周りが認知症に気づくかもしれませんが、一人暮らしの場合は自覚のないまま症状が進行してしまうおそれがあります。

詐欺・犯罪に巻き込まれる

振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺や、悪質な手口で商品を売りつける悪質商法など、高齢者を狙った犯罪は年々増加傾向にあるといわれています。
警察庁「令和2年版警察白書」では、2019年中の特殊詐欺の認知件数と被害額は前年から減少していますが約8割の被害者が65歳以上の高齢者といった状況です。
また投資詐欺などのお金を集める悪質商法に関して、同年中に寄せられた相談のうち、全体の約4分の1が高齢者からのものでした。

高齢者が安心・安全に暮らすために必要なこと

高齢者が限界まで誰にも頼れない孤立状態になることを防ぎ、安心・安全に暮らすためには、どのようなことに目を向ける必要があるのでしょうか。
近年、医療や看護の現場で注目されている言葉に、「QOL」(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)があります。
「QOL」とは日常生活を送るための食事や排泄、入浴といった日常生活動作(ADL:アクティビティーズ・オブ・デイリー・リビング)を満たすだけでなく、人それぞれが感じる「自分らしく納得のいく生活」を目指す考え方です。
医療至上主義で「たとえ苦痛や心身のつらさがあっても、治療のためには、生活や人生が治療前のようにできなくなっても仕方がない」と考えられていた時代を経て、新たに提唱されています。

介護士と安心する高齢者

高齢者におけるQOLとは?

高齢者のQOLを左右する要素には、下記のようなものがあるといわれています。

<高齢者のQOLを左右する要素>

  • 体力や認知力、日常生活動作(ADL)の向上といった健康状態
  • 所得や貯蓄、就労などの経済状態
  • 習い事や地域活動などの社会的活動
  • 安定した住まいや身近に頼れる人がいるなどの生活環境

これら、客観的に評価できる要素以外にも、その人らしい人生を楽しんでいるかどうか、充実感・幸福感といった主観的に評価される要素もあります。

高齢者のQOLを下げる要因とは?

食生活の乱れや低栄養のほか、活動量や運動量の減少、過度の疲労やストレス、精神的に限界になっていないかは、高齢者のQOL低下につながります。
これらの要因は心身の健康状態に悪影響を及ぼし、人生における充実感や幸福感が得られにくくなってしまうのです。

必ずしも「同居=正解」ではない

高齢者の中には「住み慣れた家や地域を離れたくない」と考える人も多く、家族との同居が必ずしも本人の幸せにつながるとは限りません。
内閣府の「一人暮らし高齢者に関する意識調査」結果によれば、今後の生活について「今のまま一人暮らしでよい」と回答した高齢者が76.3%に上り、現状の生活に満足している人が多いことがうかがえます。本人の希望や生き方など、QOLを低下させない選択をすることが大切です。

一人暮らし高齢者をサポートする支援サービス

一人暮らし高齢者の安心・安全を支えるには、家族の努力だけでは難しいことがあります。民間企業や行政が提供するサービスや支援を、上手に活用しましょう。

介護サービス(介護保険制度で受けられるサービス)

訪問介護や訪問リハビリなどを利用すれば、週に何度か自宅で専門家のサポートを受けられます。通所介護であれば他人との交流が増え、生活の楽しみも増えることでしょう。
介護保険制度のサービスを受けるには、要介護認定の調査・判定が必要となるため、近くの地域包括支援センターや自治体窓口に相談しましょう。地域包括支援センターでは、ケアマネージャー、社会福祉士、保健師などが常駐し、それぞれ専門的な立場からサポートを行っています。

見守りサービス・安否確認サービス

民間企業や自治体が提供している見守りサービス安否確認サービスも増えており、利用しやすくなってきています。
IT技術を活用してセンサーで室内を監視するシステムのほか、郵便局員や電気・水道の検針員が声かけをする訪問形式など、さまざまなサービスがあります。

見守りサービスの種類と比較はこちら

高齢者世帯向けの食事配達サービス

食生活の乱れや低栄養も独居高齢者には起こりがち。
年齢とともに買い物や調理が困難になるケースも多く、高齢者に合わせた食事を自宅に配達してくれるサービスを利用すれば、負担なく栄養バランスの整った食事をとれるようになります。
宅配スタッフと直接顔を合わせることで、安否確認にもつながります。

各自治体による支援サービス

各自治体では、一人暮らしの高齢者が利用できる支援サービスを行っています。サービス内容は、安否確認や外出支援、金銭管理などさまざま。
例えば横浜市では、掃除や配食、草むしり、電球交換、買い物代行・同行など、日常の困りごとを民間事業者が手伝う「生活あんしんサポート事業」を実施しています(2020年10月現在)。
公的サービスではないため、利用者が代金を負担する必要はありますが、サービス提供時に利用者に異変があった場合は親族に連絡するなど、ゆるやかな見守り体制をとっています。

高齢者のサポート

支援サービスも活用して、高齢者が安心して暮らせる生活のサポートを

高齢者人口が増加している中、一人暮らしの高齢者が、いかに安心・安全に暮らすことができるのか、その取り組みは社会全体の課題といえます。
高齢者の一人暮らしには、加齢に伴う身体機能の低下をはじめ、災害発生時や犯罪予防の観点からも限界があり、行政や民間の支援が不可欠です。高齢者本人のQOL(生活の質)を低下させないためにも、本人の希望も考慮しながら上手に支援サービスを活用するのがおすすめです。


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